技術・ソリューション
文化財保存技術
文化財や美術品は、熱、温度、湿度、光、汚染空気、微生物等、あらゆる外乱により、常に劣化の危険にさらされています。特に新築の建物では、打設後のコンクリートから放出されるアルカリ汚染因子や内装材に用いられる木材や接着剤、塗装、ホルムアルデヒド等の揮発性成分に起因する屋内の汚染により、収蔵品が変褪色、脆弱化などの損傷を受ける危険性があります。
また、屋外から侵入する空気中に含まれる亜硫酸ガス、窒素酸化物、硫化水素、アンモニアなどの有害ガスによる収蔵品の汚損の被害は、ますます深刻な問題になっています。
テクノ菱和は、長年培ってきた空調技術の応用により、温湿度制御のみでなく空気質制御も行い、文化財や美術品の収蔵に最適な環境をつくり出し、これら歴史的文化遺産の保全に貢献しています。

美術品収蔵庫

美術館
空気清浄化のしくみ

①有害・悪臭物質は、空気中の水分とともに強力酸化剤と酸化反応を起こし、酸化物質として吸着されるか、無臭物質に分解されます。
②酸性、アルカリ性ガスは、中和吸着剤により除去されます。
③オゾン等は触媒(分解)吸着剤により除去されます。
④化学反応の遅いガスは、特殊処理された物理吸着剤により除去されます。
この4つの機能で、さわやかな無害、無臭の環境をつくり出せます。
実施例

ケミカルフィルタは吸着剤を替える事により吸着性能を向上させる事ができるので、
初めは木材などの揮発成分除去のため、酸性除去用の吸着剤を使用します。
その後コンクリートより放出されるアルカリ性因子除去のため、アルカリ性除去用の吸着剤に変えます。
各種文化財保存のための温度・湿度
| 対象品目 | 温度[℃] | 相対湿度[%] | 備考 |
|---|---|---|---|
| 甲冑・武器・貨幣・科学用器具・金属・安定したさびをもった鉄・鉱物標本・陶器・ガラス・木像・パステル画 | 16〜24 | 46〜63 | 甲冑などの金属にはワセリンを塗る。 木造は急激な温度湿度の変化を避ける。 |
| 粘土の銘板・毛皮・家具・レザー・ガラスの陰画(ネガ)・ミイラ・彫刻・エッチング・水彩画・不透明水彩画 | 16〜24 | 45〜63 | ミイラは密封容器に保管する。 |
| ファイヤンス焼き(光沢ある高級陶器の一種)・じゅうたん・衣装・つづれ織り・レース・一般の織物・動植物・昆虫の標本・ワニスの塗り物・郵便切手・のり付きラベル・写真フィルム・象牙 | 16〜24 | 50〜63 | 動物・植物・昆虫の標本は定期的な検査が必要。 |
| 象眼細工・寄せ木細エ・漆器・木製パネル・張られた油絵・宝石・大理石・雪花石膏・その他 多孔性の石 | 16〜24 | 56〜63 | 絵画・張られた油絵・木製パネルなど特に傷みやすいものは、一定温湿度、例えば15.6℃、58%で保存するのがよい。 |
| 新聞紙・印刷された本・地図など・製図 | 16〜24 | 45〜63 | 虫害の発生を防止する。 |
| 彩色された原稿・写本・羊皮紙・子牛の皮の紙 | 16〜24 | 45〜63 | 薄い織物などで隔てて重ね、容器に入れて保存する。 |
| フィルム・郵便切手・のり付きラベル | 16〜24 | 50〜63 | 背面にのりが付いているので乾燥した環境が必要。 |
※登石健三 空気調和・衛生工学便覧